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高校1年・・6

2009/06/01 (Mon) - ぼくらの青春時代


「も、無理。」

そんな千石の言葉がまるで聞こえないかのように、ネットの向こう側
からボールが飛んできた。
先ほどから止むことのないショットの嵐に隣コートで練習していた福士
が、自分のことかのように顔を青ざめさせた。
福士の相手をしている穂波は、いつものニコニコした顔のままそれを
眺めていた。

「深津先生って鬼畜なんですね。」

穂波の問題発言に福士は内心、お前もだろ。と思ったが、間違って
も口には出さなかった。

いつもはユルイ感じの先生だが、以外にも練習はハードであった。
個別に考えられたメニューはすべて鬼畜以外のなにものでもなかった。
校庭のすみでは、午前の鬼畜メニューをこなした平古場と亜久津が
倒れている。

午後は福士と穂波が鬼畜の被害にあう予定だ。
それを思うと福士は身震いした。
穂波は午後は嫌だなぁ。とのほほんと言っているだけであったが。

「はい、おつかれ。・・ってだらしないなあ。」

千石はコートに倒れた。



昼休憩。

部室のそばの木の下で5人は休憩していた。
うち3人は昼食もそこそこに寝転んでいる。
それを見た福士もなかなか箸が進まない。
穂波だけはしっかりとご飯を食べ終え、千石のもってきたお菓子に
まで手をつけていた。

「中学ぬ練習もさっこーきつかったと思うんやしがな・・」

「俺んとこはわりとのんびりしてたから、すっっっっげーーきつい」

それに亜久津もああ、と頷く。

喫煙組みだったので更にきつかったのだろう。
禁煙のポスターを貼られなくても2人はやめていたに違いない。

「そういえば深津先生。更なる鬼畜発言をしてたね。」

穂波の言葉に午前の練習の最後に、鬼畜教師が言っていた発言
を皆は思い出していた。

『まだ最初だから軽めにしてあるけど、しばらくしたら普通のメニューに
するね。』

いつもの穏やかだが有無を言わせない深津独特のしゃべりであった。

しばらく黙って皆なにかを考えていたが(特に福士が)そういえば、と
相変わらずゴロゴロしている千石が切り出した。

「俺がここに入るために勉強見てくれてた友達がいるんだけどさ、
そいつもすっごい勉強教えるときは鬼畜なんだよねえ。」

「だあって、ひっちー電話しはるやつ?」

千石がそうだよ、っと返すと福士もピンっときたのか、ああ。と声をあげた。
当時、千石の横で勉強していた亜久津も彼の教えている姿を思い出して、
確かにそうだな、と思った。

「で、どんな子なの?見た目とか」

千石の電話している様子を見たことがない穂波が、疑問を口にする。

「どんなって、うーーん・・」

どう伝えようか悩んでいる千石の隣で、やっと身体を起こした亜久津が
前方を指差した。

「あれじゃね?」

そういうと皆の視線が指差した方へ向いた。

「えっと・・こんにちわ」




「この人がよっしーで、この人が凛君、あとこの弱そうなのミチルね。」

千石の紹介の仕方に福士が抗議するが、見事にスルーされる。
宍戸はそれぞれと握手をした。

「そしてこの美男子は、みなさんお待ちかねの宍戸亮くんね。」

「ちょっ!!なんだよそれ!!」

 美男子に反応したのか、宍戸は顔を赤くする。

「うん。本当に美男子だね。」

穂波が宍戸の顔をまじまじと見ながらこぼした発言に、2人も頷く。
それを聞いて更に宍戸は顔を赤くした。

「そ、それ以上褒めないでくれ!!」

「そういう反応が初々しくていいよな。」

背後から聞こえてきた怪しい言葉に驚いて皆が振り返ると、そこには
ヘラヘラとして手を振る深津が立っていた。

先生の登場に、慌てて宍戸が立ち上がりあいさつをすると深津は特に
気にした様子もなく笑顔であいさつを返した。

「宍戸くんもよかったら打っていきなね。」

そういってラケットを宍戸に手渡し去っていった。

宍戸がいい先生だな、と思っているとなぜか穂波以外がやけに緊張した
面持ちで座っていることに気付いた。

「どした?」

千石は引きつった笑顔だ。

「いや・・何企んでるんだろうって思って・・」

深津の本性を知らない宍戸には、意味が全く理解できなかった。




「亮って氷帝だよね」

向かいコートの平古場の問いかけに宍戸は驚く。

「なんで知ってんだ?」

「ダブルス強いって有名やっさーし、ちゅらいきが子・・美男子やっさーしね。」

ニヤリとする平古場に、また顔を赤くして早くやるぞと声を上げる。

真剣な表情を取り戻した宍戸のサーブから試合は始まった。



夕方、部室には先日のように机に突っ伏した福士の姿があった。
気持ちがわからなくもない千石は、そっと福士の肩にタオルをかけてやった。
そしてそれとは対照的に、はあ疲れたなどと笑顔で漏らしている穂波を
不思議そうに亜久津は眺めていた。

「そいえば、最近ベストアルバム出しちゃんよな」

「そうそう!もう俺買ったぜ。」

すっかり宍戸と平古場は打ち解けあったようで、音楽の話に没頭している。
そんな光景を微笑ましく千石が見つめていると、部室の扉が開いた。
そこには朝から全く変わらず、疲れているようには見えない深津が立っていた。

「皆鬼畜メニュー初級編おつかれ。宍戸くんはどうだった?」

亜久津はどこをどう突っ込んでいいのかわからない気分になり、舌打ちをするに
とどめた。
千石はまたもや引きつった笑顔だ。

「はい。とっても楽しかったです。なんか自分のとことは違って、のびのびとプレー
できた気がします。」

宍戸にとってここでの練習はとても不思議な気分になった。
氷帝とは違い部員同士での順位争いがないのだ。
久々に何も考えずに楽しくプレーできたことは、すごくありがたかった。

「それはよかった。じゃあまた遊びにおいでね。」

そういって深津は部室を出て行った。

「よかったじゃねえか」

亜久津がニヤリと笑って宍戸の肩をたたき、そのまま彼も部室を後にする。

「あっくんったら照れちゃって。じゃあ俺も外で待ってるね」

千石は未だ机に張り付いている福士と荷物をもって部室を出て行った。

そして残った宍戸と平古場は顔を見合わせた。

「いい部活だな。」

「でしょ?」

二人はにっこりと微笑んだ。




亜久津さん全然しゃべってくれないよ・・。

若干難産でした。
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