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第6話

2009/08/29 (Sat) - ドラゴンクエスト5


 「レックスがそんな思い詰めることなんてないよ。」
 
 そう言ったコリンズの顔が一番、思いつめているみたいだ。
 俺は思わず苦笑する。
 
 「なんでお前がそんな辛そうなんだよ。」

 「だって、君が・・」

 それっきり下を向いてしまう。
 こいつがこんなに感情的になるのも珍しい。
 コリンズの頭にポンっと手を置いて慰める。
 
 ここは船の上。
 俺たちはオラクルベリーへ向かっている。
 
 ゼクセンでしばらく、情報収集をしていたら、オラクルベリー
 の方角に一つの光が飛んでいったそうだ。
 一連の事件とこの光に何か関係があるのかわからないが、
 今は、それ以外の情報もないので仕方なく、ゼクセンから
 でている船にのってオラクルベリーを目指している。
 
 やつが死に際に言っていた、ペンダントの意味はまるでわか
 らなかった。
 
 
 どうやら孤児院の彼女と妹は、意気投合したみたいでさっき
 から客室で仲良く話をしている。
 
 あれから妹は俺と目を合わせない。
 それだけ俺に絶望したのだろう。
 兄弟の絆なんて、脆いもんだな。
 
 「なあ、あの女ってどこかであったことあったか?」
 
 突然の俺の問いかけに、一瞬コリンズは目をぱちくりさせた。
 しかし、しばらくすると理解したのか、納得したようにああ、と
 こたえた。
 
 「あったも何も、・・夢、かな?」
 
 「・・あの夢か?」
 
 コリンズは考えこむように、顎に手をあてる。
 
 「推測でしかないけどね。彼女はどことなく、その・・夢にでて
 きた誰かを連想させる。って言えばいいのかな?」
 
 歯切れの悪いこたえに、俺は眉間にしわがよる。
 それを見たコリンズがえっと、と慌てていい説明の仕方を
 考える。
 
 「俺もよくわからないけどさ、彼女そのものじゃなくて、夢の
 誰かと彼女がダブるんだよ。」
 
 そのとき、パッと一人の顔が頭に浮かんだ。
 さっきも連想した、血でそまった少女。
 
 彼女の名前は・・なんだっけ?
 
 


 
 次の日、俺たちはオラクルベリーへ到着した。
 大きな街なだけあって、港は活気付いていた。
 行き交う人々は皆笑顔で、グランバニアの城下町を連想
 させた。

 この中のどこかに操られた人がいるかもしれない。
 気を引き締めて俺たちは歩きだした。
 
 しばらく二手に分かれて俺はコリンズと情報を集めていた。
 しかし、これといって有益な情報は見つからなかった。
 
 やはりゼクセンでの話は関係なかったのだろうか。
 
 二人でどうしようか、と悩んでいると一軒の道具屋に差し掛
 かった。
 ふっと中を覗いてみると、いつかグランバニアでみた銀髪の
 少年が笑顔でお客さんと話していた。
 
 そうか、オラクルベリーとか言ってたな。
 
 俺が立ち止まって彼を見つめていると、コリンズが俺の服
 のすそをひっぱった。
 
 「どうしたの?」

 「ん?いや、あの男をグランバニアで見かけたんだ。」
 
 そういうとコリンズはその少年に目をやった。
 
 「あの少年・・」

 「え?」
 
 コリンズの顔が険しくなる。
 
 「セディと同じだ。」
 
 コリンズの言葉をちゃんと理解するまでに、しばらく時間がかかった。
 しかし、理解した瞬間、グランバニアでも味わった懐かしい感覚が
 よみがえった。

 少年がお客さんとのやり取りが終わると、俺たちに気がついたのか、
 こちらを見て驚いた表情を見せた。
 きっと俺のことを覚えていたのだろう。
 ニコリとして俺に手を振ってきた。
 
 「あなたは、あの時の!!」
 
 少年がなぜか嬉しそうな表情をするので、仕方なく俺も微笑んだ。
 こっちはわけがわからないってのに。
 
 「あの時はすいませんでした。」

 そういってカウンター越しに深く頭を下げた。
 
 「いや、別に気にすることじゃないですよ。」
 
 後ろでコリンズの笑う気配を感じながらも、勇者さまで対応する。
 いいかげんこいつも慣れればいいものを。
 きっとわざと笑っているに違いない。

 「そういえば、まだ名乗っていませんでした。僕はムーフレンです。」
 
 「レックスです。」

 俺が名乗ると、レックスと一度漏らし何かを考えてるようだった。
 しばらくすると何かに思い当たったのかあっ、っと驚いたような声を
 上げた。

 「もしや、グランバニアの王子・・勇者レックス!!」

 勇者。
 また眉間にしわがよりそうになるのを堪えて、そうですよ、とこたえた。
 俺もいい加減、慣れてくれればいいのに。
 
 目の前の少年は俺の葛藤には全く気付いてないようで、ニコニコと
 嬉しそうにしている。

 「あの、今日はどうしてここに?」
 
 「実は、ある事件について調べているんですが・・」
 
 他に当てもない。仕方なく少年に俺は事の詳細を話した。
 しかし、少年も思い当たることはないようであった。

 「うーん・・父のほうがそういうことには詳しいと思うんですが・・
 父が今出かけていて。ちょっと家で休んでいきませんか?」

 少年の申し出にどうしようかと迷ったが、コリンズが彼のこと
 が気になると小声で言ってきたので、お言葉に甘えることにした。
 
 とりあえず妹たちと合流するため、既に取ってあった宿屋に俺だけ
 向かうことにした。
 
 
 
 

 「ムーフレン、だっけ?俺はコリンズ。」
 
 「あの、もしかしてラインハット王国の?」
 
 コリンズは今、ものすごく顔に嫌だというのが出ている気がした。
 王族がこんなんじゃいけないのはわかっているが、レックスほど
 うまくはいかない。
 彼は感情を隠すことに関しては天才な気がする。
 
 ムーフレンの向かいの椅子に腰掛け、感情むき出しの視線を
 彼に送った。
 
 「君は、肩書きで人を認識しているのかな?」
 
 思わずでたキツイ言葉に、えっ?と彼が動揺した。
 
 「そういうつもりでは・・あの、気を悪くされたなら申し訳ありません。」
 
 しょんぼりして下を向いてしまった彼に、内心更に苛立ちを募ら
 せる。
 偽善者っぽいところが駄目なのか、はたまた自分にはもってない
 ものを持ってるから嫉妬しているのか。
 本人もよくわかっていなかった。

 気分を落ち着けるため、ムーフレンの出してくれた紅茶を一口
 流し込んだ。

 「そんなことはどうでもいいよ。単刀直入に聞くけどさ、君ずっと夢
 を見てるよね?」
 
 彼の紅茶のカップに伸びていた手が途中で止まった。
 彼は夢という単語に明らかに動揺している。

 それでもできるだけ平然を保とうと、何事もなかったように彼も
 紅茶に口をつけた。  

 「夢は、誰だって見るもんじゃないですか?」
 
 「惚けるのも大概にしろよな。お前はそうだな、あの怪力姫って
 とこだな。」
 
 コリンズの口元がニヤリとつり上がった。
 ムーフレンはさっき以上に動揺して、目を泳がせた。
 どうやらこれは当たりのようだ。
 
 「あなたは・・」
 
 「そんな姫さんが大好きだった神官、とでも言えばわかるかな?」
 
 すると彼は今にも泣き出しそうな顔をした。
 その表情は懐かしむようなもので、ボソリと囁かれた名前はあの
 夢にでてくる神官のものだった。
 
 しかし、その囁きはあまりにも夢の彼女とはかけ離れたものに
 感じた。
 夢ではあんなに大好きだった人も、今目の前にいる人では別なんだ
 と思うと、なんだか無性に虚しくなった。 

 夢でも今でも、変わらず好きなのはレックスだけかもしれない。
 
 「お前は、この夢はなんのためにあると思う?」
 
 こうして同じような夢を見ている人が、何人もいるなんてただ事
 じゃない。
 この夢に何かしらの意味があるはずだ。
 
 「なんのため、ですか・・。そういうふうには考えたことがありません
 でした。」

 そういって苦笑した。
 コリンズもそんな風に考えるようになったのは、レックスが夢をみて
 いると確信をもってからだ。
 そこまでムーフレンに期待などしてはいなかった。
 
 ただ、彼と話をしてみたかったのは、その夢の彼女の面影を
 彼に探してしまったからかもしれない。
 
 実際は外れだったな、と失礼なことを思いながら大好きなレックス
 が帰ってくるのを待つことに徹した。
   
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