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第8話

2009/09/28 (Mon) - ドラゴンクエスト5


 「お前に会いたかった、勇者よ。」
 
 目の前の銀髪が静かに揺れた。
 憎しみの対象のはずなのに、そんな感情は正直全く
 沸いてこなかった。
 
 彼は僕と同じように、悲しみを抱えた瞳をしていた。
 
 「運命とは、皮肉なものだな。」
 
 運命。
 彼もそれに翻弄されてるのかと思うと、不思議と今までの
 孤独感が消えていった気がした。
 
 「お前を殺さないといけないなんて、僕は悲しいよ。」
 
 そういってやれば、彼は驚いたのか目を見開いた。
 そしてフッと微笑んだ。
 
 「そうだな。私も悲しい。」
 
 
 僕はその穏やかな笑みが忘れられなくて、運命に抗う決意を
 したのだった。
 
 
 
 
 
 「レックス??」
 
 目が覚めれば、目の前には見慣れた顔があった。
 それに安堵し、ふうっと息を吐いた。
 
 「魘されてたけど、夢・・みてたの?」
 
 「ああ。」
 
 「そっか・・。」
 
 硬いベッドから起き上がれば、もう2日目になる見慣れた
 船内だった。
 なんだか夢を見た後はいつも自分がどこにいるのか、
 わからなくなってしまう。
 
 「あいつは・・」
 
 俺の問いかけに、ん?っとコリンズが振り返る。 
 
 「あいつは、・・ちゃんと幸せになれたのか?」
 
 言い終わってから思わず出てしまった言葉にはっとした。
 それをコリンズはクスっと笑った。
 
 「レックスが思ってるほど、世界って残酷じゃないと思うよ。」
 
 俺はわけがわからず、眉間にしわを寄せた。 
 それでも、コリンズは微笑んだまま俺を見つめていた。
 
 「俺は絶対に、レックスを裏切らない。」
 
 そういったコリンズは真剣そのものだった。
 
 「俺だって、お前だけは裏切らない。」
 
 俺の唯一の安息。
 裏切るわけがないだろ。
 
 
 
 
 テルパドールは、いつかの記憶の通りに居心地の悪さを
 感じた。
 それはこの暑さだったり、思い出だったりが影響している。
 
 
 6年前に訪れたときに、兜を手にした俺を見て父が泣いて
 いたのを思い出した。
 そのときの俺は、もうすでに諦めのような感情があった。
 幼いながらもなんとなく、俺の運命は変えることができない
 のだろうと思っていた。
 それで仕方がないのだと思っていたから、父自身の運命に
 泣いているのかと思っていた。
 
 しかし今思えば、父は自分自身にではなく、俺を運命に
 縛ってしまったことを後悔してくれているのかもしれない。
 
 素直になっていい。
 あの言葉は、本当の俺に薄々感づいているからこそ出た
 言葉だったのかもしれない。
 
 
 そんなことを考えながら城門まで行けば、なにやら中が
 騒がしい。
 門番たちもいなく、中からはざわざわと住民たちの声が
 聞こえてきた。
 
 ただ事じゃないと、俺たちは中へと急いだ。
 
 
 「何があったのですか?」
 
 慌てる住民たちに問いかける。
 俺を見た住民はあっと声を上げて、一瞬安心した表情を見せた。
 
 「アイシス様が、アイシス様が羽のついたやつに襲われて!!」
 
 「羽!!」
 
 俺たちはアイシスがいるはずの地下へと急いだ。
 

 
 
 「ついに手に入れた」
 
 女王のもとに駆けつければ、追いかけ続けていたやつと対峙していた。
 間違いない。あれは確実に天空人だ。
 しかし目は虚ろで、禍々しい力が漂っていた。
 周りの兵士たちは皆殺されているようで、その強さを物語っていた。
 
 「それを渡すわけにはいきません!!メラミ!!」
 
 「そんなもの、効かぬ。」
 
 その言葉通り、片手で簡単に女王の放った呪文を打ち消した。
 じりじりと天空人が女王へと進んでいった。
 
 「真実を知るお前は殺しておくべきだな・・」
 
 「待ちなさい!!」

 そういい天空人の前に飛び出たのは孤児院の彼女だ。
 腰から二つの剣を抜き、相手と対峙する。
 小さく威力はそんなになさそうだが、かなり使い込まれたような
 剣であった。
 
 「お前たちは!!・・そうか、お前は勇者・・」

 「・・やっと追いつけた」
 
 やつの言葉を無視して俺も天空の剣を構える。
 それに続いて他のやつらも武器を構えた。
 しかし、それを見た天空人はただクックと笑うだけだった。
 
 「馬鹿らしいな勇者。運命に縛られここまで来るとは、な。」
 
 その言葉にビクっとする。
 それを悟られないように、冷静なふりをした。
 しかしそれも長くは続かなかった。
  
 「お前は気付いているのだろう?ただの道具でしかないことに」
 
 「・・黙れ」

 「お前は逃れることが出来ないんだ。勇者という運命から・・」

 「黙れと言っている!!」

 叫び剣を振るう。
 それを軽々と後ろへ飛ぶことでかわし、くつくつとやつは笑う。
 
 「今のお前はただの虫けらだ。せいぜい運命に足掻き苦しむがいい。」

 そういい残し、やつはペンダントごと大空へと一瞬で消えていく。
 残された俺たちは暫くその様子を眺めていることしかできなかった。
 
 運命に縛られた勇者。
 その言葉をきくと、冷静ではいられなかった。
 諦めていたはずなのに。
 
 「・・レックス」

 心配そうなコリンズの声を無視して、俺は女王へと向き直った。
 
 「女王・・やつは、何者なんですか?」
 
 女王はいつになく険しい表情を浮かべていた。
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