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第12話

2010/03/03 (Wed) - ドラゴンクエスト5


 「やっぱり、息子には無理をさせていたんだな・・」
 
 マリアに席をはずしてもらい、今はリュカと2人きりで部屋にいる。
 いつになくリュカは落ち込んでいた。
 自分がどんな苦境に立たされても、いつもどこか涼しげな目で
 俺に微笑んでいたリュカが、息子のことでこんなにも辛い表情
 を浮かべている。
 やはり父親なのだな、と思った。
 
 「そうだな。小さいころから勇者って言われてきたんだ。ずっと
 自分をつくってきたんだろう。」
 
 「・・僕はさ、レックスにはもっと自由になってほしいってずっと
 願ってきたんだ。彼が勇者だって知ったときは本当に哀しかった。
 勇者になったらもう、どんなに幼くても戦いに身をおくしかなかった
 から・・。」
 
 そういって苦笑を浮かべる。
 それはまるで自分を責めるようで、みていてこっちが辛くなった。
 
 「リュカのせいじゃないだろ・・」
 
 「気付けなかったのは僕だ・・。それは僕の責任だ。」
 
 それきり黙ってしまう。
 俺もなにも言うことができず、部屋に静かな時間が流れる。
 
 リュカの紅茶がないことに気付き、入れてあげようとポットに手を
 かけると、リュカが口を開く。
 
 「彼女は、大丈夫かな・・」
 
 「彼女って、天空の剣もってっちゃったあの子か?あれって、
 あの子が勇者になったってことだよな?」
 
 俺が紅茶を入れ終わると、小さくお礼を口にしてそれに口をつける。
 これはマリアが気に入っているオラクルベリー産のものだ。
 どうやらリュカも気に入ってくれたらしい。
 
 「たぶん」
 
 「はあ、しかしあんなこともあるんだな。」
 
 俺たちはあのあと、コリンズから詳しい話をきいた。
 導かれし者たちの話も、エスタークの話も。
 あのセディという少女が勇者の子孫である話も・・。
 リュカは本当に信じられなかったみたいで、ありえないと無意
 識のうちに囁いていた。
 
 「彼女は勇者になったこと、後悔どころか、嬉しそうだったな」
 
 「うん。何か力がほしかった理由があるんだろうけど、やっぱり
 心配だ。勇者なんて宿命は重荷すぎる。本当に、なんでいつも
 僕じゃないんだ・・。」
 
 自分の子供だけじゃなくて、他の人の心配もするところは
 リュカらしいというか・・。
 その心配をもう少し自分にも向けたらな、と俺は常々思っていた。
 リュカは自分が傷つくことをなんとも思っていない。
 だからこそとても危うい存在だった。
 
 「リュカ、お前はもう随分と苦労した。そろそろ休んだっていいん
 じゃないか?」
 
 俺の言葉をきいても、リュカは黙ったまま俯いてしまった。
 俺はどうすればいいのかわからず、冷めてしまった紅茶に口を
 つけため息をついた。
 

 

 
 「コリンズ王子は大変生意気でしたね。」
 
 「・・・・・・・・は?」
 
 あれから特になにもせず部屋でだらだらと2人ですごしていた。
 最初は元気のないレックスだったが、久しぶりに2人きりでくだら
 ない話をしたので、後半はとても盛り上がった。
 やはりこうやって気を使わずに話ができる相手は貴重だな、と
 浸っていた俺に、いきなり意地の悪い笑顔で話しかけてきた内容
 がこれだ。
 
 「俺がいつ生意気で?」
 
 「なに惚けてんだよ。お前の態度は酷いもんだったぞ。」
 
 そういってクスクスと笑い出す。
 こうやって素直に笑うのは珍しいな。
 こんなしぐさは、いつもよりレックスが幼く感じる。
 俺の膝に相変わらずいたプリズンも、ご主人様の様子が珍しいのか
 大きな目でじっとレックスを見つめている。
 
 「なのに俺の本性知ったとたんコロっと態度変えてさ。」
 
 「・・・あのころのことはもう忘れてくれ」
 
 俺がはじめてレックスに出会ったのは、レックスが8歳、俺が7歳の
 ときだ。
 最初の印象はお互い最悪だったのを覚えている。
 
 「でも、嬉しかったぜ。素の俺を好きになってくれて」 
 
 「・・レックス。」
 
 恥ずかしくなったのか、レックスは顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。
 
 「まるで愛の告白だな。」
 
 「ばーか」
 
 そういって2人で噴き出す。
 そんな2人を不思議そうにプリズンが見あげてくるのだった。

 
 

 
 「これは・・」
 
 セディたちはこの光景に見覚えがあった。
 こんな惨い殺し方はあの天空人しかいない。
 魔界へと続く扉の前で3人は立ちつくした。
 
 「私たちが来たときにはもう・・。」
 
 エルヘブンの民は口を噤んだ。
 
 セディたちはあのあと、天空人が飛んでいったと思われるエルヘブン
 方面へと急いだ。
 エルヘブンは魔界とこちらの世界をつなぐ唯一の場所。
 すぐにこの扉のことがタバサには思い浮かんだ。
 
 「しかし、ここの扉はすでに堅く閉ざされています。魔界へ行く手立て
 はもうありません。」
 
 エルヘブンの民にも今の扉はどうすることもできないという。
 
 「どうすればいいのかしら・・」
 
 途方にくれるセディ。
 そのときムーフレンがあっと声をあげる。
 
 「天空城・・マスタードラゴン様に会いにいけば・・」
 
 ムーフレンに異論を唱えるものはいなかった。
 
 
 

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