「亜久津くん、ちょっといいですか?」
伴爺の言葉に亜久津と千石は立ち止まった。
「あぁ?なんだ?」
前にされた留学の話は、すでに断ってある。
もともと留学する気はなかったのかもしれないが、
母親である、優紀ちゃんのことを思って断った部分
もあるだろう。
それを伴爺もわかっていたので、あまり強くは勧め
なかった。
「今回は留学の話ではありませんよ。
これのことなんですが・・。」
そういって伴爺が見せたのは、ある公立高校の
パンフレットだった。
それを隣にいた千石がのぞいた。
「ん?追ヶ瀬高校?」
「ええ、そうです。」
伴爺の意図がわからず、亜久津は眉間にしわを寄せた。
「これがどうしたっていうんだよ?」
伴爺は優しく微笑んだままだ。
何を考えているのかまったくわからない。
「ここに私の教え子が教師としているのですが・・」
「だからなんだって聞いてるだろ?」
だんだん亜久津がイライラしだす。
千石は気にせずに、そのパンフレットを見ている。
「ここに、進学する気はありませんかねぇ?」
「「・・・・はぁ?」」
さすがにこの提案には2人同時に疑問の声をあげた。
「いえね、彼がテニス部を新設したいらしいのですが、
いかんせん人材不足みたいでしてねぇ・・。よかったら
行ってみてほしいのですよ。」
なんてことを言い出すんだ。
若干呆れ亜久津は溜息をつく。
もうイライラなんか忘れてしまった。
「おいジジイ。もうテニスはやらないっていったじゃねぇか。」
「おやそうでしたっけ?」
千石も伴爺も、彼の本心を知っている。
本当は、まだ続けたいはずだ。
「いい話だと思ったんですけどねぇ・・。千石くんはどう
思いますか?」
「・・え?あ、オレ?」
「ええ。あなたは亜久津くんのテニスが好きでしたよね?」
千石にとって亜久津は仲間であり、ライバルであった。
亜久津と打っている時は楽しかったし、いい刺激になった。
なにより、彼のテニスが大好きだった。
何者にも捕らわれない、どこまでも自由な姿勢が。
そうだ・・オレは・・
「ねぇ伴爺。」
「なんですか?」
「・・オレも一緒に、ココ行っちゃ駄目かな?」
「・・はぁ!!?」
千石の言葉に驚いたのは亜久津だけで、伴爺は穏やかな
まま、千石を見つめていた。
「あなたがそうしたいのなら、そうしなさい。やっと見つけた
のでしょう?」
伴爺は何もかもを見透かしたようにそう応えた。
千石はこの人に出会えてよかったと、心から思った。
「うん。オレ、あっくんとテニスがしたい。」
千石は未だ、わけがわからないといった顔の亜久津に振り
返る。
「オレ、わかったんだ。からっぽの理由。」
その目には、もう迷いはなかった。
「オレ、あっくんともう一度テニスがしたい。」
千石の言葉に、亜久津は何も言うことができなかった。
なんか無理がある展開な気がする・・。
伴爺は2人にテニスを好きでい続けてほしいんです。
きっと。
高校名は自分の出身校の名前をちょっと変えてみた。
PR